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使う文章、捨てる文章

2018-09-11

わたくし生井利幸は、現在54歳。20年前は、言うまでもなく、34歳でした。

20年前は、米ペンシルベニア州ラフィエット大学で教鞭を執っていた頃です。当時は34歳。わたくしは、大学で教える傍ら、精力的に様々な活動をしていました。

20年前、わたくしは、学術研究に加え、創作活動にも携わり、寝る時間を削って執筆活動をしていました。当時のわたくしは、書いた文章は、そのほとんどを新作の単行本、マスメディア掲載用コラム、あるいは、大学の講義用教材として使っていました。

一方、20年後の現在はどうでしょうか。現在も、同じように相当量の文章を毎日書いていますが、書いた文章のほとんどを捨てています。書いた文章を捨てるとは、「書いた文章を破棄・放棄する」ということです。

世の中の常識として考えれば、20年前、即ち、1998年当時と2018年現在を比べれば、わたくし自身の人生の中に「20年分の人生経験」が増えています。20年前の自分と比べて、現在の自分のほうが「雲泥の差」と言えるほどの人生経験の積み重ねがあるのに、現在は、一体どうして書いた原稿のほとんどを捨てているのでしょうか。

今、わたくし自身、”腹”で哲学することは、「人生経験を積んだからこそ、今、書いた文章を捨てられるようになったのだ」ということです。表現を換えれば、20年という歳月をかけて、今、やっと、「一人の人間として正しく生きる」ということが、”ほんの少し”わかりかけてきたということなのでしょう。

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