宇宙史という”超越的巨大大枠”における人類史を総合把握・総合咀嚼し、「人間は、一体何者なのか」について哲学する重要性について
1948年、ジョージ・ガモフ(George Gamow, 1904-1968))は、”big-bang theory”(ビッグバン宇宙論)の基礎理論を発表した。現在の科学は、ビッグバン宇宙論では、宇宙の誕生は、138億年前のビッグバン(大爆発)をその起源とするが、これを最初に提唱した学者がガモフである。
ガモフは、ウクライナ出身の理論物理学者である。ガモフは、1934年にアメリカに移り、ジョージ・ワシントン大学、及び、コロラド大学で研究・教育に従事し、原子核物理学の発展に寄与した学者である。
宇宙物理学では、宇宙は、時間・空間・物質エネルギーもない「無」の状態から、「プランク時間」と呼ばれる『一瞬』のうちに起こったと推測されるのが通説である。この「プランク時間」は、通常の物理法則で成り立つものではなく、『この一瞬』は、いわゆる『“超越的”一瞬』(“transcendental” moment)である。プランク時間は、1秒の1000兆×1000兆×100兆分の1秒、まさにこれは『“超越的”一瞬』である。
ビッグバン理論においては、宇宙は、今から138億年前に、時間・空間・物質エネルギーのない「無」の状態からプランク時間が起こり、一瞬にして加速膨張したとされる。即ち、超越的高温、且つ、超越的高密度の中で膨大なる素粒子が発生。その後、クオークが結合して陽子・中性子が生成(温度は1兆度)、陽子と中性子が結合すると、水素・ヘリウムの原子核が生成(温度は10億度)された。38万年後には、空間において光が直進(温度は3000度)。10億年後には、銀河や惑星が形成。
宇宙空間において、銀河は、2000億から4000億個以上あると推測される。太陽系(the solar system)が浮かぶ銀河系には、2000億個以上の星があるとされる。太陽系が浮かぶ銀河系の大きさは、直径10万光年の大きさである。銀河系の中心には”bulge”(楕円状に膨らんだ中心部)が存在し、このbulgeから太陽系まで2万5000光年の距離がある。太陽系の中の「地球」(the earth)が誕生したのは46億年前。「人類」(humankind)が独自の歩み(系統性)を歩み始めたのは、今から800万年~500万年前である。
ここからは、人類の起源について述べていきたい。人類の起源は、言うまでもなく、「猿人」(Ape man)とするのが通説である。現在の研究では、最も古い時代の猿人は、エチオピアで発見されたラミダス猿人とされる。猿人は、類人猿とは異なる系統を歩んだことから、猿人の出現を、地球史最古の人類であると解される。170万年前にはアフリカに「原人」が出現した。原人の脳容積は、1000cc程度であり、猿人の2倍である。原人が進化すると「旧人」が出現(40万年前)した。その後、旧人が進化して「新人」(現生人類)が出現。アフリカで発見された「新人」(Homo sapiens sapiens)は6万~5万年前に出現。新人は、顔の形、骨格等、現代の人間と比べて、ほとんど変わることはない。やがて、地球は、1万年前に、更新世(氷期と間氷期)の終焉を迎えた。地球は温暖になり、完新世(地質的現代)に突入した。これにより、地球上の氷河が減少し、陸地は、現在の地球とほぼ同じ状態となった。
138億年前の宇宙の誕生から46億年前の地球の誕生、そして、800万年~500万年前の人類の出現という「『宇宙の誕生』から『人類の出現』」という”宇宙史・地球史の果てしなく長い歩み”を捉えるとき、理性的存在者としての人間は、次の5つの根源的問題について考える必要があろう。
その5つの問題とは、1)「宇宙とは何か」、2)「地球とは何か」、3)「空間とは何か」、4)「時間とは何か」、そして、5)「人間は、一体何者なのか」という問題である。これらの問題は、まさに一つの学問分野だけで扱う問題ではなく、関係する諸々の学問分野を通して学際的に研究されるべき問題である。そして、今、「この学際研究の『基盤』」となる学問分野が「哲学」であると、私は明言する。
英語音声講義
■人間に賦与された理性
⇒ reason supernaturally given to human beings(英語音声講義)